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規格外だらけの格闘ゲームイベント『Red Bull Tower of Pride』

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2017年11月23日(木・祝)に東京・大森ベルポートで開催された『』を現地・オンライン配信を通じて観戦しました。

普通のゲームイベントとは異なる規格外だらけの大会だった、というのが個人的な印象です。そのように感じた点について、5つのエピソードに分けて書いてみることに。

1. コイン争奪戦→ボス戦→決勝トーナメント、一般的な大会と一線を画す特殊ルール

まず序の口ですが大会のルールが独特。 ゲームイベントの定番フォーマットは、オンラインで勝ち上がった選手がトーナメントの準決勝や決勝をオフラインで実施するというもの。

決勝トーナメントをオフラインで実施するのは最終的に『Red Bull Tower of Pride』も同じですが、その過程が異なります。

まず、決勝トーナメントの出場枠は8個で、それぞれをゲートキーパーと呼ばれるボス的な招待プロゲーマー、コミュニティ大会の優勝者8人が守っています。

一般参加者は、まずこの8人いるゲートキーパーへの挑戦権を得るため、自信が持つコインをかけて対戦しながら最多コイン獲得を目指します。

この大会のためだけにこんなコインを作ってしまうのもすごい

Twitch配信だと、試合結果に応じて所有枚数がほぼリアルタイムに配信画面で流れてくるので、戦況が刻一刻と変化していく様子を感じられてまずそれがかなり面白い(これをどうやって表示させているのか仕組みが個人的にすごく気になりました)。

終盤は数十枚のコインをフルベットしての対決になるのですが、こちらは単純に負けた方がこれまで得たものを全て失う対決となるわけで、観戦者は「一体どうなってしまうのか…!?」というような気持ちで試合を見守ることになります。とにかく面白いです。

2. 取材案内リリース「現地での取材は残念ながら出来ません」

自分はレッドブル主催大会を何度も取材させていただいていることもあり取材案内のプレスリリースをいただけるのですが開催数日前に送られてきたリリースの内容に驚かされました。

「取材はできませんし、事後のオフィシャル写真配布もありませんがよろしければ観戦にお越しください」というような内容なのです。

普通、大会やイベントをやる場合は多くの記事掲載を目指すため可能な限りのメディアを呼ぶものですが、今回のリリースの内容はその真逆。

取材は出来なくてもいいから見に行こうということで会場に行って、念のため質問してみたところ写真撮影はOKとのこと。ただ、メディア向けの席やスペース、配慮というものは事前の案内どおりでありません。他の一般のお客さん同様にご自由にお楽しみください、ということと理解しました。

3. プロゲーマーを多数招待しているのに賞金がない

今ではゲーム大会に高額な賞金が出るのも当たり前になりましたが、レッドブルは5年開催した『Red Bull 5G』に賞金を出しませんでした。今回も同様です。

招待されているプロゲーマーは世界王者を含め世界トップクラスの選手ばかりですが、プライドと最強の称号のみをかけて戦うというコンセプトに賛同して賞金は無くとも出場しているのがすごい。

一般出場者としても有名プロゲーマーが多数参戦していましたし、日本全国、海外からもこの大会に出るためにやってきている人がいました。

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4. 興味のあるゲーマー優先? 新展開の発表を大々的にやらない

大会会場では、レッドブルによるゲーマー向けフリーペーパー『Red Bull Gaming Sphere Tokyo』の準備号が何気なく配布されていました。

これだけでも個人的になかなかの情報ですが、中身を読んでみるとレッドブルによるアジア初のゲーミングスペース『Red Bull Gaming Sphere Tokyo』が2017年12月に東京・中野にオープンするというとんでもないことが書かれていました。

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普通ならば、イベント中に時間を設けて「ここで重大発表があります!」的にアナウンスを行ない、メディア向けのフォトセッションも実施、みたいなのが良くあるパターンですが、先の通りそもそもまずメディアを積極的に呼んでいないのでそんな展開もありません。

おそらくですが、ゲーマー向けの施設となるため一般に広めるよりも、フリーペーパーを読んでみようと思うようなゲーマーにまずお知らせして、さらにその人たちがコミュニティに向けて情報を広めてくれればよいという狙いなのかも、という印象でした。

その狙いにまんまと乗せられたであろうというのが、まさに自分なわけですが。

※ちなみに、大会の終盤に配信内でフリーペーパーとゲーミングスペース展開についての紹介がようやくありました。

5. 優勝者インタビュー、表彰式、偉い人の挨拶なしの大会フィナーレ

決勝はかずのこ選手がLuffy選手に3-0のストレートで勝利。その後、かずのこ選手が最強の証であるトロフィーを掲げると、キャノン砲による金銀テープ吹雪が舞い観戦者から歓声が上がります。その後どうなるのかなーと思っていたらかずのこ選手が引きの絵のまましばらく映され、突如として大会ロゴのみが写し出され突如の終了ムード。

ストリーミング配信では「え、おわり?」「インタビューないの?」「このあと続くよね?」と戸惑うコメントが飛び交っていましたが、優勝インタビューなし、入賞者のフォトセッションなし、スポンサーや主催者のあいさつなしと通常フォーマットは無視で、「最強決定!以上!」とでもいうかのように大会はそのまま終了となりました。

この大会の場合は、このあとで通常的なインタビューや表彰式をやっても、確かに蛇足にしかならなかったかもしれません。

『Red Bull Tower of Pride』から感じたこと

『Red Bull Tower of Pride』は上記のようなことに驚きながら観戦したイベントで、個人的には「高額賞金を出せるようになればeスポーツが盛り上がる」という説へのカウンター的な要素も感じられた大会でした。ゲーマーは賞金のために戦っているのか?賞金が無かったら戦わないのか?

格闘ゲームでいえば、いまでこそ高額賞金がありますが、昔のゲーマー達はコンピューター戦からはじまり、兄弟や近所の友達との対戦、そして自分の腕前と強さを確認するために近所・地域・近県・全国のゲームセンターをめぐり、その中から選りすぐられたゲーマーによる全国大会、そして世界大会と舞台を移しながら対戦・観戦に賞金なしでも熱狂してきました。

この大会は、そんな時代の大会を現代で再現してみたものというような印象を受けました。実際のところについては、そのうち企画者の松井さんに答えを聞きに行ってみたいと思います。

このテキストが答えの一つな感じもあり

こんなイベントが出来るのもブランドマーケティングを重視しているレッドブルだからこそという部分もあります。通常の企業だったら、やはりいかに視聴数・掲載数・露出量を得られるかが実施の可否になるので、これまで書いたようなやり方は無理でしょう。

また、そのような数字を競うものではなく、コミュニティ・カルチャー重視のイベントを企画して承認をもらい、手堅く運営をこなしてコミュニティから賞賛を得た企画・運営のグルーブシンク社や関係者もとにかくすごいですね。

選手・観客・スタッフが楽しそうな大会は最高

上で終わるつもりだったのですがもう一つだけ。

大会後にハッシュタグを追って読みましたが参加選手・観戦者からも「またやってほしい」というような意見をたくさんみかけました。これだけですでに素晴らしいのですが、個人的にさらに最高なのは、大変な運営をしていたスタッフの方々がものすごく楽しそうだったということ。

審判をしていたしゅうでぃさんは、笑顔で対応していて本当に楽しそうでした。

『Red Bull 5G 2013』ファイナリストのベックスさんもスタッフをされていて、試合の合間に話しかけてみたら「これからこの台でウメハラvsルフィ戦はじまるんでヤバイです!ぜひ見て下さい!」と興奮気味に教えていただいてこちらも楽しんでいるなーという感じでした。

f:id:theworld:20171123135929j:plain 真面目に仕事をしている時のベックスさん

他のスタッフも知っている顔がたくさんでしたが後のツイートを見るとやはりみんな楽しかったと。スタッフが一番楽しめているようなイベントは、見ている側・プレーする側も間違いなく楽しめる本当に最高のイベントではないかと思います。

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